加古川市・加古郡医師会
前会長 川 西 正 廣戦後抗生剤、抗結核剤をはじめとする新薬の開発や、輸血、麻酔技術の確立による手術の進歩により、感染症等の急性期疾患を克服した。これが第一次医療技術革新である。次いで1970年代から80年代にかけて血液自動分析器の開発により血液検査の種類が増加した。またCT、エコー、MRIなどの新しい診断技術の開発により病気の診断が容易となった。診療面ではICUや高カロリー輸液を駆使し、救急・重症患者の救命、延命も急速に向上した。高度な手術の開発、放射線治療の進歩、レーザ治療、衝撃波腎結石破砕装置、人工透析、人工関節、内視鏡手術などレパートリーは豊富となった。近年は臓器移植、遺伝子治療も実用化されている。これが第二次医療技術革新である。これらは先端医療、ハイテク医療と言われているが、それは技術的基盤がコンピュータ、自動化など先端技術にあるためである。
過去50年間の技術革新による医療により、人々は30年も延命できるようになった。ところが、このような華々しい成果と同時に終末期医療、高齢者の医療・介護が問題となってきた。
成人病時代、高齢社会に必要なものは医療のシステム化、グループ化、多くの医療関連職種の人達との協力、保健・医療・福祉の連携である。これらが効率よく有機的にはたらくようにするためには医療の情報化が大切である。
加古川地域は時代を先取りする形で昭和63年から地域保健医療情報システムに取り組み、その成果が今注目されている。加古川市加古郡医師会新制50周年の大きな節目にこのシステムが完成しようとしていることは大変意義深いことである。
情報技術(コンピュータ)が医療に入ってきたのは1980年代初期からで、医療の効率化の道具として使用された。保険請求や会計事務、検査データ報告書の作成なとが代表的なものであり、大量のものを早く、効率よく、正確にということで使われた。1990年代に入ると病院でオーダリングシステム(医師がカルテに書いた指示をその場でコンピュータに入力する方式)が始まった。これは検査室、薬局、放射線室、会計の効率化と迅速化に役立ち、患者の待ち時間短縮とサービスの向上につながった。しかし医師の入力が大変であるとか診療が滞ってしまうという反対もあったが、今日では大半の医師が入力している。オーダリングシステムは医療におけるコンピュータの意義を大きく変えることになった。効率化の道具として事務部門で使用していたコンピュータを医師や看護婦、検査技師が操作し、データの蓄積、ネットワーク、映像の伝達のために利用するようになった。コンピュータに蓄積されたデータをうまく利用することによって医師も医療も変わり、質が向上するという評価がなされるようになった。
当地域で行っている医療情報システムは、病院のコンピュータ化とは異なり、地域住民の健康管理、疫学利用、診療支援、病診連携、保健・医療・福祉の連携に役立てることを目的としたものである。各医療機関の効率化には直接関係ないが、医療の質の向上、連携医療、患者へのインフォームドコンセントに役立つものである。現在全てのシステムが完成していないので、自治体や患者にどれほど役立っているかが見えないので十分な評価を得ていない面もあるが、いずれ自治体や患者や健診受診者だけでなく社会全般にとって大変役立つものであることがわかってくるものと思う。
最近は医療内容の説明、レセプトやカルテの開示が問題となっているが、当地域の医療情報システムは、患者に検査データ、処方データの開示をコンピュータを使って既に行っており、この面では日本で一番開示が進んでいると言える。
今後、電子カルテ、レセプトとの連動、遠隔医療が進めば、患者からの要求がなくしても医療機関自身が医療情報の開示を行っていることになり、我が国では開示の進んだ地域として全国的に注目され、高い評価を受けるものと思われる。
最後に当地域の保健や医療の情報化にご理解とご支援を賜った一市二町のトップを含めた関係者、議会関係者、そして地域住民の皆様に感謝申し上げます。また当地域の医療情報化が成功したのは多くの医療機関がシステムに参画し、入力に協力して下さったためであり、多くのドクターや医療スタッフの皆様に感謝申し上げます。また影からこのシステムを支えて下さった情報センターの熱意ある職員にも感謝申し上げます。
50周年を機に多くの医療機関、医師及びコメディカルスタッフの方々がより一層利用頻度を高めていただき、地域住民の為になるように努力して下されば将来の夢がさらに拡がるものと思う。 平成9年10月